借地権(親子間の土地の賃貸)

今日は親子間の土地の賃貸についてです。

前回は一般的な借地についてお話しましたが、借地について税理士が関与することが多いのは、親の土地に子供が自宅を建てる場合や社長の土地に会社が自社ビルを建築する場合です。

建物は土地が無いと建ちませんので、建物所有者は土地について何らかの権利が必要です。自らが土地を所有していれば所有権、土地を有償で借りていれば借地権、無償で借りていれば使用貸借の権利、このいずれかが必要です。ただ親が子に土地を貸す場合はあんまりこういう権利について意識しないことが多いので、ただで良いよ、あるいは少し賃料を払って、とか色々あると思います。

ここで注意が必要なのは賃料を取る場合です。賃料を取るということは親子間で土地の借地契約が結ばれたと考えられます。親が地主で子が借地人つまり借地権を有する借地権者となります。
そうしますと、前回借地権の評価のお話をしましたが、借地権は更地価格×借地権割合(住宅地は主に6割~7割)分の価値がありますので、この借地権価額が親から子へ贈与されたと認定される可能性があります。

じゃあただで貸せば良いのかというとその通りですが、税法では賃料を払っても借地権が発生しない場合があります。正確に言うと民法上は借地権があっても税法上は借地権の価値が無い状態です。

借地権の価値の意味は土地を安く借りられる権利の価値ですので、地代が安い契約であればその分借地権の価値が高いと考えられます。こういう借地が一般的な借地のことで、借地権の価値は更地価格の6割~7割になります。価値が高いですね。

逆に高い地代を払わないと使用できないような借地の権利の価値は、安く借りられる借地より価値が下がりますよね。地代が高くなれば高くなるほど、、で、税法上は年間地代が更地価格×6%相当の場合には借地権価格はゼロになるという規定を設けています。
例えば更地価格が1億円の場合は年間地代が600万、月額50万円の地代の契約の場合は、税法上の借地権価格はゼロになります。
土地所有者の権利が100%、借地権者の権利は0ということになります。

この更地価格6%相当の地代のことを、税法では「相当の地代」と言います。相当の地代を支払えば借地権は発生しない。このような高額な地代は一般的な借地契約では考えられないですが、親子間や社長と同族会社間の土地の賃貸では重要な考え方になります。

まとめに、親子間で土地を貸し借りする場合のケースごとに権利関係を考えます。

1.ただで貸す場合(使用貸借と言います)
→土地の権利は親が100%、子は0になります。ここでは贈与税の問題は生じません。

2.通常の賃料で貸す場合(借地権割合が70%地域の場合)
→土地の権利は親が30%、子が70%になります。この場合に借地契約時に借地権価格相当の金銭のやりとり(一般的に権利金といいます)が無い場合は、親がその借地権価格相当の金額を子に贈与したと認定されて贈与税がかかります。

3.相当の地代を支払う場合
→土地の権利は親が100%、子は0になりますので、借地権の贈与の問題は生じません。

親子間の土地の賃貸がある場合は、ただで貸すか相当の地代で貸すか二択になりますね。
通常は親の方が資産を持っていますので、親が子に相当の地代で貸す選択はしないので使用貸借が多いです。一方子が親に貸す場合や夫婦間で土地の賃貸をする場合は所得税や相続税を考えて相当の地代を選択する場合もあります。

親子間で賃料のやりとりをする場合は同居しているかどうかで所得税の取り扱いが変わってきますが、このあたりはなかなか難しい話ですので、また機会があればお話したいと思います。

サブコンテンツ

このページの先頭へ